厚生労働省は毎年、調査員が一般消費者を装って薬局やウェブサイトで医薬品を購入している。彼らは客ではなく調査員であり、医薬品を販売する際に踏むべき手順が実際に踏まれたかどうかを記録している。令和7年度分の結果は令和8年8月7日に公表された。店頭でも画面上でも、医薬品を買うときに制度上何が起きるはずで、実際には何が起きているのか——その問いに対する、現時点で最も事実に近い回答がここにある。
この調査はどう行われているか
方法は覆面調査である。一般消費者である調査員が実際に購入を行う。店舗調査は令和7年12月から令和8年1月、インターネット販売調査は令和7年12月から令和8年2月にかけて実施された。店舗の調査件数は1,506件(薬局807件、店舗販売業699件)、インターネット販売の調査件数は257件である。

薬局と店舗販売業の区別は見落とされやすいが重要だ。薬局は処方箋に基づく調剤ができ、薬剤師の配置が求められる。店舗販売業は要指導医薬品以外の一般用医薬品を販売する業態で、リスク区分の低い分類については薬剤師ではなく登録販売者が対応しうる。本調査の多くの項目は、この両者を分けて報告している。
この数字は令和8年5月の改正前のもの
調査全体の読み方を決める日付の関係がひとつある。調査の実施期間は令和7年12月から令和8年2月。一方、要指導医薬品のオンライン服薬指導を導入し、濫用のおそれのある医薬品の取扱いを強化した改正薬機法の施行日は令和8年5月1日である。
つまり今回の調査が測ったのは、ルールが変わる前の状態だ。これは基準線であって、改正の成績表ではない。改正が何を変えたのかを示せるのは、令和8年度分が公表されたときである。改正そのものについては医薬品販売制度の2026年改正についてで別に扱っている。
店舗販売の結果
店舗側では、「そこに誰が立っているか」に関わる項目が高い数字を示した。名札等により専門家の区別ができたのは92.9%。要指導医薬品では、情報提供を行った者が薬剤師であったのが96.3%、使用者の状況についての確認が行われたのが96.8%。第1類医薬品では、情報提供を行った者が薬剤師であったのが91.8%、相談に対して適切な回答があったのが99.5%であった。

下がったのは手続的な項目である。第1類医薬品の文書による情報提供は76.7%。情報提供内容の理解確認が行われたのは65.4%で、これは店舗側の全項目中で最も低い。要指導医薬品では文書による情報提供が81.0%、購入者が使用者本人かどうかの確認が73.6%であった。
インターネット販売の結果
インターネット販売側では、傾向が反転する。ウェブ上のフォームが強制できる手順はほぼ満点だった。第1類医薬品の使用者の状況についての確認は100.0%、情報提供内容の理解確認も100.0%、指定第2類医薬品の注意喚起の認識も100.0%。情報提供の有無は92.5%である。

下がったのは人が関わる部分だ。第1類医薬品において情報提供を行った者が薬剤師であったのは81.6%。相談に対しては必ず回答があった(100.0%)が、対応した者が薬剤師であったのは58.8%にとどまる。第2類医薬品等の相談では、対応者が薬剤師または登録販売者であったのは64.0%であった。
店舗とネット、項目別対照
| 項目 | 店舗 | ネット |
|---|---|---|
| 第1類:使用者の状況の確認 | 94.8% | 100.0% |
| 第1類:情報提供(店舗は文書による) | 76.7% | 92.5% |
| 第1類:情報提供内容の理解確認 | 65.4% | 100.0% |
| 第1類:情報提供を行った者が薬剤師 | 91.8% | 81.6% |
| 第1類相談:対応者が薬剤師 | 89.5% | 58.8% |
| 第2類等相談:対応者が有資格者 | 82.8% | 64.0% |
| 指定第2類:注意喚起の認識 | 85.4% | 100.0% |
| 濫用のおそれのある医薬品:販売方法が適切 | 86.8% | 90.5% |
比較にあたっての注記:店舗とインターネット販売は別々の調査項目表で調べられており、文言も一部異なる。店舗は「文書による情報提供」、ネットは「情報提供の有無」である。有資格者の要件も区分により異なる(店舗の第2類相談は登録販売者、ネットの第2類等相談は薬剤師または登録販売者を基準とする)。厳密な同一条件の比較ではなく、二つのプロフィールを並べたものとして読まれたい。数値は厚生労働省「令和7年度医薬品販売制度実態把握調査結果(概要)」(令和8年8月7日公表)による。

読み取るべき構図
二つの販売チャネルの弱点は鏡像の関係にある。インターネット販売は、システムが強制できる手順——チェックボックス、表示される注意喚起、確認画面——のすべてで満点に近く、有資格者が実際に応対するという一点で最も弱い。店舗はその逆で、有資格者はそこにいるが、その周辺の手続——とりわけ理解の確認——で数字が落ちる。

購入する側の実感に置き換えるとこうなる。ネットで第1類医薬品を買えば、手順は最後まで進み、見るべき画面はすべて表示される。だが質問をしたとき、答えた相手が薬剤師である割合は6割弱だった。店頭では確率が逆転する。応対するのはおそらく薬剤師だが、文書を手渡されないことがあり、理解したかを確かめられることは少ない。
その薬剤師の確認が何を尋ねるべきものなのかは、第1類医薬品のネット購入の手順で段階を追って整理している。二つを並べて読むところに意味がある。一方は何が起きるべきかを述べ、もう一方はそれが実際にどれだけ起きているかを測っている。
なぜこの調査があるのか
日本は一般用医薬品を区分ごとに異なる取扱い要件のもとに置いている。要指導医薬品は薬剤師の対面対応を要し、その下に第1類、第2類(指定第2類を含む)、第3類が続き、それぞれに「誰が販売できるか」「何を提供しなければならないか」「何を確認しなければならないか」の義務が付く。これだけ細かい規則構造は、店頭と画面上で実際に実行されて初めて意味を持つ。覆面調査はそれを確認するための仕組みであり、毎年実施されるからこそ、その年次推移が規則の実効性の実際の測定値となる。

ただし、この数字から特定のサイトが信頼できるかどうかは判断できない。調査は匿名の集計だからである。その問いには自分で確認できる公開された手がかりがあり、オンライン薬局を見分ける四つのレッドラインに整理した。同種の制度比較は海外薬局ウォッチにまとめている。
FAQ
この調査は誰がどのくらいの頻度で行っているか。
厚生労働省が毎年実施している。令和7年度分は令和8年8月7日に公表され、一般消費者である調査員が実際に購入する覆面調査の方法による。
調査件数はどのくらいか。
店舗1,506件(薬局807件、店舗販売業699件)、インターネット販売事業者257件である。
ネットで相談すれば必ず薬剤師が答えるのか。
そうではない。令和7年度分では、第1類医薬品の相談に対して回答は必ずあったが、対応者が薬剤師であったのは58.8%であった。店舗の対応する数値は89.5%である。
店舗側で最も低かった項目は。
第1類医薬品の情報提供内容の理解確認で、65.4%である。
この数値で特定の薬局やサイトを判断できるか。
できない。本調査は標本全体の匿名集計結果を報告するものであり、個別の店舗や事業者を特定せず、特定の事業者に対する評価でもない。
References
- 厚生労働省「令和7年度医薬品販売制度実態把握調査結果について」(令和8年8月7日公表)https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_75385.html
- 厚生労働省「令和7年度医薬品販売制度実態把握調査結果(概要)」https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001735076.pdf
- 厚生労働省「令和7年度医薬品販売制度実態把握調査結果(報告書)」https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001735077.pdf
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_75385.html)を加工して作成。
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