日本では、添付文書は製造販売業者の判断だけで改訂されるわけではない。多くの場合の起点は、厚生労働省が発出する「使用上の注意の改訂指示」通知である。本稿では、誰が発出し、その後に何が起きるのか、2026年度にこれまで発出された8件、そして買い手が見落としやすい「掲載までのタイムラグ」を整理する。
改訂指示通知とは何か
改訂指示通知は、厚生労働省が製造販売業者に対し、添付文書の「使用上の注意」の改訂を指示する文書である。独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)が自サイトに掲載し、関係する製造販売業者はこの通知に基づき添付文書を改訂する。通知は指示であり、改訂後の添付文書はその結果にあたる。

回収とは別の制度であり、イエローレター・ブルーレターと呼ばれる緊急安全性情報とも別である。後者については回収と安全性速報の読み方で別途扱った。改訂指示は日常的かつ高頻度のチャネルであり、月に数回発出され、市場から製品を引き上げるのではなく文書を変更する。
2026年度の8通知
下表はPMDAが公表する2026年度一覧を、2026年8月24日時点で確認したうえでそのまま再掲したものである。成分名は通知の記載どおりとした。各成分が何に用いられるかについては本稿では扱わない。それは処方医師に向けて書かれた添付文書の領域である。
| 通知日 | 通知番号 | 対象成分名 |
|---|---|---|
| 2026年8月17日 | 医薬安発0817第1号 | ドナネマブ(遺伝子組換え)、レカネマブ(遺伝子組換え) |
| 2026年8月7日 | 医薬薬審発0807第1号/医薬安発0807第1号 | ビルトラルセン |
| 2026年7月14日 | 医薬安発0714第1号 | エソメプラゾールマグネシウム水和物、オメプラゾール、ボノプラザンフマル酸塩、ラベプラゾールナトリウム、ランソプラゾール(経口剤)ほか |
| 2026年6月30日 | 医薬安発0630第13号 | セフカペンピボキシル塩酸塩水和物(小児用製剤)ほか |
| 2026年6月16日 | 医薬安発0616第1号 | 炭酸リチウム、カルボキシマルトース第二鉄ほか |
| 2026年6月5日 | 医薬安発0605第1号 | ドナネマブ(遺伝子組換え)、レカネマブ(遺伝子組換え) |
| 2026年5月21日 | 医薬安発0521第1号 | アバコパン |
| 2026年4月21日 | 医薬安発0421第1号 | インフリキシマブ(遺伝子組換え)ほか |
一つ指摘しておきたい傾向がある。同じ二成分——ドナネマブとレカネマブ——が同一年度内に2回、6月5日と8月17日に登場している。改訂指示は「一度出せば終わり」の手続ではない。製造販売後の調査が続く品目では、文書は数か月のうちに繰り返し開かれうる。

見落とされるタイムラグ
PMDAは自らのページに、改訂指示が出されてから同サイトの添付文書情報が改訂されるまでには、ある程度の時間がかかると明記している。本稿で最も実務的な一文はここである。データベースを見て添付文書が変わっていなくても、それは指示が出ていないことを意味しない。データベースが追いついていないだけかもしれない。

実務上の帰結は明快である。通知日を基準とし、データベースの更新日時を基準としない。データベースのスナップショットで作業している卸は、規制当局の実際の立場から数週間遅れうる。越境供給のために品目文書を維持する立場であれば、突合すべきは添付文書一覧ではなく通知一覧である。
確認する順序
- 年度別の通知一覧。PMDAは改訂指示を年度別に掲載しており、1998年度まで遡れる。現行は2026年度のページ。
- 月次の添付文書更新ページ。PMDAの情報提供サイトには「1ヶ月以内に更新された添付文書情報」というページがあり、過去1週間・過去2週間・過去1ヶ月のショートカットと、「掲載分」「削除分」の区分がある。
- 再生医療等製品は別建て。再生医療等製品に分類される品目には独立した改訂指示通知ページがあり、同じく年度別に整理されている。医薬品の一覧には現れない。
- メール配信。PMDAはPMDAメディナビというメール配信サービスを運用している。確認時点ではなく発出時点で知る必要がある場合に用いる。

調達・輸入の実務にとっての意味
許可を持つ卸や海外の買い手にとって、以上から導かれる習慣は三つある。第一に、事案発生時ではなく一定の周期で通知一覧と突合すること。第二に、日付だけでなく通知番号を記録すること——同じ日に複数の通知が出ることがあるためである。第三に、再生医療等製品を独立した情報系統として扱うこと。実際に独立しているからである。

本稿の事実は厚生労働省およびPMDAの公開資料に基づく。Tsubaki Tradingは東京都知事医薬品卸売販売業許可(第5313250689号)を保有し、これらの規制文書を日常業務として取り扱っている。
FAQ
改訂指示通知は誰が発出するのか。
厚生労働省が発出する。PMDAが自サイトに掲載し、製造販売業者がこの通知に基づき添付文書を改訂する。
改訂指示は回収と同じか。
異なる。改訂指示は市場に流通し続ける品目の文書を変更する。回収は製品を市場から引き上げる。制度も掲載チャネルも別である。
2026年度は何件発出されたか。
2026年8月24日時点で8件、4月21日から8月17日までの日付である。一覧は年度別で、年度内に増えていく。
サイトの添付文書がまだ旧版なのはなぜか。
PMDAは、改訂指示の発出から同サイトの添付文書情報の改訂までに一定の時間を要すると明記している。規制当局の立場を示すのはデータベースの更新日時ではなく通知日である。
再生医療等製品も同じ一覧か。
別である。再生医療等製品はPMDAサイト上に独立した改訂指示通知ページを持ち、同じく年度別に整理されている。
References
- 使用上の注意の改訂指示通知(医薬品)/PMDA
- 2026年度指示分/PMDA
- 使用上の注意の改訂指示通知(再生医療等製品)/PMDA
- 1ヶ月以内に更新された添付文書情報/PMDA医薬品医療機器情報提供ホームページ
- 新着情報/PMDA
出典:独立行政法人医薬品医療機器総合機構ホームページ(https://www.pmda.go.jp/)を加工して作成。
本稿は情報提供を目的とし、診断・治療・服薬に関する助言ではなく、医療用医薬品の広告でもありません。編集方針をご参照ください。情報基準日:2026年8月24日。
